全日病ニュース

全日病ニュース

ホーム全日病ニュース(2022年)第1020回/2022年11月1日号次の感染症危機に備えるための対応で法改正

次の感染症危機に備えるための対応で法改正

次の感染症危機に備えるための対応で法改正

【静岡学会・特別講演2】福島靖正 厚生労働省医務技監

 主に新型コロナ対策について話をする。9月26日に全国一律で、新型コロナ患者の全数届出を見直すなど、Withコロナに向けた新たな段階における療養の考え方を示した。発生届は65歳以上、入院を要する方など4類型に限定し、重症化リスクの高い方を守るために、保健医療体制の強化、重点化を進める。症状が軽いなど、自宅で療養開始を希望される方は、検査キットでセルフチェックし、陽性の場合、健康フォローアップセンターに連絡して自宅で療養してもらうことになる。
 新型コロナの感染状況をみると、感染者数は累積で2千万人、死亡者数は4万5千人を超えているが、欧米と比べると、人口当たりの比率で感染者数も死亡者数も低い。2020年の感染初期の頃も現在もコロナ対策は失敗しているとの指摘が少なくないが、そんなことはないだろうという気持ちがある。医療現場の方々の協力のおかげでこのような状況になっていると思う。
 新たな変異株が出なければ、このまま感染者数は減少していくと考えられるが、そこはわからない。このため、新型コロナ病床の確保、診療・検査医療機関(発熱外来)の取組みを継続するとともに、高齢者施設等における医療支援を強化する。ワクチン接種は進めないといけない。特に、若い方々のオミクロン株対応のワクチン接種率が上がることを期待している。
 オミクロン株になって、若い方の感染が増え、重症者は減った。亡くなる方についても、人工呼吸器やエクモを装着しないケースが増えている。これは感染により基礎疾患が悪化して亡くなる方が増えているということだ。季節性インフルエンザと比べると、まだ高齢者では重症化率、死亡率とも新型コロナのほうが高いが、若い方では近づいてきている。ただ、数字のベースが違うので、単純な比較はできない。
 これまでの取組みを踏まえた次の感染症危機に備えるための対応の具体策について説明する。感染症法等の改正では、医療提供体制の強化として、①感染症に対応する医療機関の抜本的拡充②自宅・宿泊療養者等への医療提供体制の確保等③広域での医療人材の派遣等の調整権限創設等を講じる。
 感染症に対応する医療機関の抜本的拡充では、平時において都道府県と医療機関の間で新興感染症等に対応する病床等を提供する協定を結ぶ仕組みを法定化し、感染症危機発生時には協定に従った医療の提供を求める。医療機関に対し、協定の履行を促す措置を設ける一方で、感染症流行初期における事業継続確保のための減収補償の仕組みを創設する。
 自宅・宿泊療養者等への医療提供体制の確保等でも、平時において都道府県と医療機関等との間で、医療の提供や健康観察の実施について協定を締結する。医療人材の確保では、国による医師・看護師等の派遣や、患者の搬送等を円滑に進めるための調整の仕組みを創設するとともに、DMAT(災害派遣医療チーム)等の派遣・活動の強化に取り組む。
 新型コロナの対応の中で病院に関しては、「病院の規模が小さく、病床の融通が利かない」、「感染症患者とその他の患者を別々に収容するような構造になっていない」、「場所はあっても、スタッフが足りない。手厚く配分するには2個病棟を閉じて、1個病棟分を生み出さねばならない」といった問題があると思う。
 すぐに解決できる問題ではないが、現場と十分にコミュニケーションをとって解決していきたいと考えている。


福島靖正 厚生労働省医務技監

 

全日病ニュース2022年11月1日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
本コンテンツに関連するキーワードはこちら。
以下のキーワードをクリックすることで、全日病サイト内から関連する記事を検索することができます。