全日病ニュース

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医療機器のDX、最先端の事例を紹介

医療機器のDX、最先端の事例を紹介

【特別企画】病理デジタル画像、スマートポンプ、3歩の住まい

 特別企画では「未来は今」と題して、医療機器のDXにおける最先端の事例の紹介があった。毛利博氏(藤枝市立総合病院病院事業管理者)を座長に、小倉隆氏(浜松ホトニクス株式会社)、長谷川英司氏(テルモ株式会社)、植田勝智氏(ふじのくに医療城下町推進機構常務理事兼ファルマバレーセンター長)の3名が講演した。
 冒頭、毛利氏が「医薬品・医療機器の生産額が全国1位を誇る静岡県は、世界一の健康長寿県の形成をめざして地域企業の高い技術力を活用しながら、モノづくり・ひとづくり・まちづくりを展開している。今後は、医療もICTを活用しながら、医療DXを推進する必要がある」と述べた。
 小倉氏は、病理分野におけるDXとして、病理ホールスライド画像のデジタル化について紹介。組織・細胞ガラススライド標本を高解像度にデジタル変換した画像であり、◇複製が可能◇付帯情報の保存◇異なる染色標本を並べて観察するなど、顕微鏡では難しい観察が可能◇保管が省スペース◇ネットワークを介した画像の共有・閲覧◇他のソフトウェアやプログラムと連携した画像処理や画像解析が可能―といった利点があるとした。
 今後は、AIによる業務管理、データ管理、統計処理、画像解析、診断支援、教育支援などの業務を支援するという。小倉氏は、「AIが最終的な責任をとれるわけではないので、ロボットが病理医に置き換わるということではない。診断支援のツールとして、人間とAIのコラボレーションといった視点が重要になるのではないか」との見解を述べた。
 次に、長谷川氏が、輸液ポンプとシリンジポンプのDXについて説明した。 現在、輸液ポンプやシリンジポンプは「効率の時代」に来ており、データ連携できるスマートポンプや、病院情報システムとの連携が求められていると強調した。
 テルモ株式会社では、IoTを活用した投与データ管理に加え、バッグ、抗がん剤の暴露対策商品、クローズド輸液システムなど、さまざまな方法で安全を提供できるように商品を提供している。
 長谷川氏は、「これからはモノからコトに、ソリューションを移していく必要がある。新型コロナによるパラダイムシフトや、働き方改革の追い風を受けて、さらにDXを進めていく必要があると感じている」と述べた。
 最後に、植田氏が、静岡県のファルマバレーセンターが取り組む健康長寿自立支援プロジェクトの一つである「自立のための3歩の住まい」について説明した。
 人生100年時代に向け、高齢者の自立期間の延伸を図ることを目標としている。
 2021年3月に敷地内に設置されたモデルルームには、◇ベッド中心に、水回りを一直線に配置した設計◇感染症対策のための抗菌効果のある壁材や、転倒時の衝撃吸収をする床材を使用◇高機能生活補助ベッドや歩行トレーニングロボットなどの積極的な活用◇次世代ディスプレイの導入やオンライン診療の活用―といった特徴がある。
 植田氏は、「今後、高齢化に伴い在宅医療を望む方が増えると思う。自立を支援できるような部屋で過ごしてもらい、長く自立した生活を送っていただければと考える。標準モデルの設計ができたところで地域の企業に参画してもらい、地域経済の発展にもつなげたい」と述べた。


小倉氏


長谷川氏


植田氏

 

全日病ニュース2022年11月1日号 HTML版

 

 

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