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ホーム全日病ニュース(2022年)第1020回/2022年11月1日号病院のタスクシフト/シェアをどう進めるか

病院のタスクシフト/シェアをどう進めるか

病院のタスクシフト/シェアをどう進めるか

【シンポジウム4】薬剤師、看護師、医師事務作業補助者、救急救命士の実態を報告

 シンポジウム4では、「ポストコロナ時代のタスクシフト」と題して、石川賀代氏(石川記念会HITO 病院理事長)を座長に、薬剤師の舟越亮寛氏(鉄蕉会亀田総合病院)、看護師の本田和也氏( 国立病院機構長崎医療センター)、医師事務作業補助者の立場で門井洋二氏(八尾医療PFI 株式会社)、救急救命士の伊藤康太郎氏(駿甲会コミュニティーホスピタル甲賀病院)が登壇し、それぞれの職種の実態が報告された。
 冒頭、石川氏が「医師の働き方改革が迫る中で、多職種がチーム医療をどう展開していくべきか。人の配置にはコストがかかるので、しっかりとプランを立てる必要がある。さまざまな医療従事者がいる中で、意識をどう高めてもらうか、スキルをどう担保するか、業務をシェアする側の余力をどう確保するかなどが課題になる」と述べた。
 薬剤師として舟越氏は、病院薬剤師のタスクシフト/シェアの実践について、亀田総合病院の経験を踏まえ、説明した。病院の調剤室での業務にとどまる「狭い調剤業務」から、薬物治療の一連のサイクルの中でチーム医療に参加する「広い調剤業務」に実践の場を広げていくことに向けた課題を示した。
 診療報酬の病棟薬剤業務実施加算が2014年度に導入され、その後、対象の拡大や充実が図られてきた。しかし、現状の評価では、中小病院にとっては、薬剤師を新たに配置するには十分な評価とは言えず、「病院全体として薬剤師の増員と診療報酬増点を働きかける必要がある」と述べた。
 また、薬剤師の働き方改革としても、より臨床に即した場面での参画が求められており、薬剤師以外でもできる調剤業務のタスクシフト/シェアや調剤業務の機械化を図るべきとした。
 看護師として本田氏は、離島からの救急患者などに対応する長崎医療センターでの経験から、タスクシフト/シェアに対して「診療看護師(NP)が貢献できること」を説明した。
 診療看護師は日本NP協議会が認める教育課程を修了し、試験に合格した看護師のこと。国家資格ではないが、これまでグレーゾーンとされ、厚生労働省により再整理された、医師の診療の補助として看護師が実施可能な業務の6割以上が診療看護師による介入であるという。特定行為研修資格認定の21区分38行為の医療行為を実施できる看護師でもある。
 あらかじめ策定した医師の包括的な指示の下、医師不在時や対応困難時の診療・処置、各種検査オーダー代行も実施する。現場の即戦力になるほか、病院経営上の効果も期待できる。「時間的・精神的に医師の負担軽減に貢献していることは間違いない」としつつ、◇成熟不足◇資格のあり方◇養成、医療機関での受入れ、キャリアパスなどに課題があるとした。
 PFI事業会社の社長として門井氏は、医師事務作業補助者の現状と課題を説明した。医師事務作業補助者は、診療報酬の医師事務作業補助体制加算が導入された2008年度の当時から、勤務医負担軽減の役割が期待されていた。厚生労働省調査でも負担軽減の効果が確認されており、医師事務作業補助体制加算はその後、拡充・充実が図られている。医師の業務をタスクシフト/シェアすることで、「医師の仕事の面積が小さくなる分、密度が濃くなる」と強調した。
 また、課題として、人材教育・育成システム、業務範囲の整理、雇用・待遇面の充実をあげた。八尾市立病院では、「組織としての業務管理」を行うため、医師事務作業補助者を看護局の所属とし、教育・育成・評価といった一連の人事マネジメントを可能にしているという。
 救急救命士として伊藤氏は、甲賀病院での救急車の運用の経験などを踏まえ、病院で働く救急救命士の現状を報告した。2021年10月に救急救命士法が改正され、救急救命士の救急救命業務が、「病院前」だけでなく医療機関の救急外来でも実施できることになった。甲賀病院は救急医療を充実するため、2020年5月から救急救命士の採用を開始し、2021年4月に8名に増員、同8月に病院が運用する高規格救急車を導入した。
 その結果、救急救命士の業務は、◇患者搬送◇救急外来◇院内急変対応◇各部門の補助へと広がった。伊藤氏は、甲賀病院において救急救命士と看護師が救急車に同乗するRRC運用を実施しているとしつつ、課題として「業務の棲み分け」と「教育体制」をあげた。今後の展望としては、「消防」と「病院」の救急救命士に2分化することが望ましいと述べた。

 

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