全日病ニュース

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コロナの教訓活かし医療DX進める

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【静岡学会・シンポジウム2】マイナンバーカードの利便性向上も

 シンポジウム2では、「どうする?データヘルス集中改革」と題し、日本経済新聞社編集委員の大林尚氏と一般社団法人医療データ活用基盤整備機構理事長の岡田美保子氏が登壇した。
 政府は2020年に「新たな日常にも対応したデータヘルスの集中改革プラン」を発表。この集中改革プランは、①全国で医療情報を確認できる仕組みの拡大②電子処方箋の仕組みの構築③自身の保健医療情報を活用できる仕組みの拡大―の3つの柱で、進められている。一方、新型コロナウイルス対応では、患者の管理に時間と手間がかかった実態があり、患者情報のデータ化が大きな課題として浮上している。
 このような背景を踏まえて、大林・岡田両氏が講演を行った。
 大林氏は、コロナ禍において、ヘルスケアのデジタル化の問題点が日本で顕在化したと指摘。例えば米国ニューヨーク州マンハッタンでは、どこの病院でICUが空いているかがデジタルで一目瞭然になる仕組みがあると紹介し、日本でも医療のデジタル化を進めておけば「自宅療養のコロナ感染者が重症化した場合に、駆け込む病院を容易に探すことができたはず」と述べた。
 大林氏は「デジタル化が進んでいれば、医療崩壊を防げたのではないか。感染症との戦いはコロナが収まった後も続く。この体験を踏まえ、医療DXを治療に活かすことに教訓を得たので、次の感染症に備えて今からできることを進めていくべきだ」と訴えた。
 政府が現在進めているデータヘルス改革については、「センシティブな情報を悪用する『不届き者』がいることを前提にシステムをつくるべきだ。悪用した人に厳罰を科し、誰がどのような目的でその情報を見たかも検証できるようにする。デジタルでは必ず記録が残ることを世の中に周知し、『情報を盗まれるのではないか』という人々の不安を解消するしかない」と述べた。
 岡田氏は、オンライン資格確認システムで医療情報の閲覧ができることについて、「『よりよい医療が可能になる』と厚生労働省の資料にあるが、医療従事者ではない私にはよくわからない」と、効果を実感できる段階にまだ至っていないことを指摘。一方、オンライン資格確認システムを活用した資格確認の利用状況をみると、保険証による資格確認が大半で、マイナンバーカードを用いた資格確認は少なく、全体の0.5%ほどと説明した(7月時点)。
 その上で、岡田氏はマイナンバーカードで受診した場合に閲覧可能となる医療情報がどれほど活用されているかを示した(7月分)。マイナンバーカードで受診した件数に占める薬剤情報利用の件数の割合は、全体で47.2%。詳しくみると、病院22.9%、医科診療所57.6%、薬局60.8%。特定健診情報を利用した件数の割合は、全体では16.7%で、病院8.8%、医科診療所12.0%、薬局25.0%となっている。
 岡田氏は、「薬剤情報の利用割合が医科診療所・薬局で比較的高いので、薬剤情報は必要性があると思う。ただ、マイナンバーカードで受診した件数が少ない。『新たな情報を薬局や診療所が閲覧することで医療の質が向上する』と言えるようになるためには、マイナンバーカードを用いた情報の閲覧自体が増えなければならない」と述べた。

 

全日病ニュース2022年11月1日号 HTML版

 

 

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