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ホーム全日病ニュース(2022年)第1020回/2022年11月1日号医師確保計画における都道府県の目標医師数の設定を議論

医師確保計画における都道府県の目標医師数の設定を議論

医師確保計画における都道府県の目標医師数の設定を議論

【厚労省・医師確保計画WG】医師少数県以外の医師数を減らすべきではない

 厚生労働省の「地域医療構想及び医師確保計画に関するワーキンググループ」(尾形裕也座長)は10月12日、医師確保計画をめぐり議論を行った。特に、医師少数県以外の都道府県が目標医師数を設定する場合の考え方について、基本的な方向性には賛同が得られたが、委員からさまざまな意見が出た。
 医師確保計画では、医師多数区域と中程度区域の二次医療圏の目標医師数は、都道府県において独自に設定することになっている。しかし、医師多数区域と中程度区域が、計画開始時点の医師数より多い目標設定を行うと、医師少数区域の医師確保対策が十分にできない可能性が出てくる。このため、医師の地域偏在の是正を図る観点からも、目標医師数は計画開始時点の医師数を上回らない範囲で設定することを論点とした。
 ただし、今後の医療需要の増加が見込まれる地域では、新たに国が示す「計画終了時に計画開始時点の医師偏在指標を維持するために必要な医師数」を踏まえ、都道府県はその数を上回らない範囲で目標医師数を設定する。
 また、医師少数県以外において、二次医療圏の設定上限数の合計が、都道府県の計画開始時点の医師数を上回る場合は、都道府県の計画開始時点医師数を上回らない範囲で、二次医療圏の目標医師数を設定する。
 これは都道府県内の二次医療圏の目標医師数の合計が、都道府県の目標医師数の基準を上回ってしまう場合には、特定の二次医療圏の目標医師数を減らすことで、各医療圏に医師を「均す」ことを意味する。
 全日病会長(日本医師会副会長)の猪口雄二委員は、「特定の二次医療圏の医師を均すよりも、二次医療圏を見直すことが先ではないか。大学病院がある二次医療圏は、専門医も多く、病院数も多い。交通の便などを考えても、医療圏の状況は地域によりさまざまだ。無理に均すと、混乱が生じかねない」と述べた。
 全国自治体病院協議会会長の小熊豊委員も、「都会は専門医がたくさんいる。そこを減らすと、『最後の砦』の機能が弱まってしまう。都会の専門医を減らせというのは違うと思う」と訴えた。
 一方、健康保険組合連合会参与の幸野庄司委員は、「医師少数区域以外はこれまで目標医師数を独自に設定できた。そこは基準を設けるべきだ。その上で、将来的には医療需要が減るので、それを見込んで、計画開始時点を下回る目標医師数を設定してもよいのではないか」と主張した。
 厚労省の担当官は、「現状で医師が多い地域は、専門性の高い医療を提供している、あるいは働き方改革で人員を増やしているかもしれない。全体のバランスを崩さないための穏当な方法ということで、『計画開始時点の医師数を上回らない範囲』という基準を提案している」と説明した。
 奈良県立医科大学教授の今村知明委員は、「医師数を増やしている状況であるので、医師を減らすというよりも、増える医師をどう配分するかということであり、医師少数区域により手厚く配分することを考え、医師多数区域の医師を増やす努力はしないということだ」と説明した。

地域枠で選択する診療科も課題
 地域枠・地元出身者枠の論点についても、さまざまな議論があった。
 見直しの方向性としては、◇医学部定員の減員に向け、都道府県は、積極的に恒久定員内の地域枠や地元出身者枠の設置を大学と調整する◇キャリア形成卒前支援プランを通して、学生時代から地域医療に従事・貢献する医師としての姿勢等を涵養し、有効な取組みについての情報共有を行う機会を定期的に設ける─などを講じる。
 全日病副会長の織田正道委員は、「地域医療に従事・貢献する医師」として、地域枠の医師が選択する診療科について質問。文部科学省の担当官は、現状の地域枠で診療科の制限は行っておらず、さまざまな基本診療領域の診療科が選ばれているが、地域が求める診療科を選択する仕組みもあるとの回答があった。織田委員は、後期高齢者が増える中、総合的な診療能力を持つ医師の養成が求められていると強調した。
 また、地元出身者枠については、一般枠の中に位置付けられ、特定地域での従事要件も課されないため、位置づけが不明確との指摘が出た。
 最新データを用いて医師確保計画の効果を検証することでは、医師偏在指標の医師数に用いる三師統計の集計時期の問題で、次期医師確保計画を策定する2023年度までに、集計結果を反映させることができない。厚労省は、三師届・業務従事届のオンライン届出が今後始まることから、結果を早期に公表できるよう検討を進める考えを示した。既存の他統計との連携を含め、三師統計の充実化も図る方針だ。

 

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