全日病ニュース

社会のあり方を変えるのが本当の社会保障改革

【特別鼎談】人生100年時代の社会保障　～小泉進次郎議員との鼎談～

　学会２日目の注目のセッションは、小泉進次郎衆議院議員を招いた特別鼎談だ。小泉議員を囲み、猪口雄二会長と安藤高夫副会長（衆議院議員）が人生100年時代の社会保障を語り合った。会場に聴衆が入りきれず、第２会場を設けてテレビ中継の画像を流した。小泉氏が会場入りすると握手攻めでなかなか登壇できなかったほどの熱気。猪口会長がギター演奏と自作の歌詞で小泉氏を紹介すると会場は笑いの渦に包まれた。最初に小泉氏が「『人生100年時代』は『３万円』事件から始まった」と題して講演した。
　今や民間企業の広告にも使われるようになった「人生100年時代」だが、きっかけとなったのは「３万円事件」だった。政府は、2015年12月６日、年金生活者支援給付金を打ち出した。年金を受給している高齢者に３万円を渡すというもので、財源は3,000 ～ 4,000億円。小泉議員を含む自民党若手議員が「ちょっと待った。いつも財務省は子育て支援などに金がないと言いながら、おかしいじゃないか」と声を上げた。自民党内で若手の言うことももっともだという声が拡がり、将来の社会保障について議論する「2020年以降の経済財政構想小委員会」を立ち上げることで収めることになった。
　この小委員会で生まれたのが人生100年時代という言葉。そこから様々な政策の形が出てきた。小委員会が出したメッセージは人生100年時代のバイブルになっている。タイトルは「レールからの解放」で、「人口減少を強みに変える新たな社会モデルを目指して」という副題がついている。
　小委員会は、その後①人生100年型年金②勤労者皆社会保険制度③健康ゴールド免許の３本柱の提言をまとめ、さらに話題になったこども保険も提案した。小委員会が打ち出した政策が実現のレールを走り始めた。こども保険の議論が盛り上がった結果、消費税の使い道の組み換えなどで幼児教育・保育の無償化が行われる。骨太の方針には、勤労者皆社会保険制度が盛り込まれた。これは週20時間以上働く人であれば、正規、非正規に関係なく社会保険に加入できる仕組みを想定している。人生100年型年金は、年金受給開始年齢を柔軟化し、70歳以降も受給開始を選べるようにする制度である。
　ニュージーランドのアーデン首相やタレントの萩本欽一氏と会った時の逸話を紹介しながら「これからの社会保障改革は社会保障制度だけの改革を意味するのではなく、まちづくりなども含め、社会全体のあり方が問われる改革だと思う」と締めくくった。

レールを換えることを当たり前に
　小泉議員の講演を受けて、三氏による鼎談が行われた。
猪口　人生100年時代は定年のない社会である。医師は定年がなくてもいいと思うが、会社勤めになると、上がつかえているとか、給与などの問題もある。どうやって変えていくのか。
小泉　私も定年をなくそうと思っている。課題は定年をなくした時、若者との新陳代謝をどうするか。一人ひとりの能力に合った環境を整えると同時に労働市場の流動性をいかに高めていくかが課題になる。これまでは企業を守ることに眼目が置かれていたが、我々の発想は人を守る。
　芸能界、スポーツ界では30代、40代の引退はよくあるが、これからは企業人も引退ではなくレールを換えるのが当たり前の社会を作っていくべきだ。社会のあり方を変えないと本当の社会保障改革はできない。
猪口　国会議員に仕事を変えられた安藤さんの思いは。
安藤　転職しようと思っていたが、よく考えると借金が残っていた（笑）。
猪口　人生100年時代では生き方と同時に仕舞い方も大切。長生きさせようとして本人が苦しむより、前からどういう医療を受けたいか家族で話し合っておくべきだ。その辺はどう考えるか。
小泉　ある国の大使館の人と話していたら「我々の国には介護の課題がない。日本人のように長生きしないから」と言われた。人生100年時代の日本ならではの課題があり、一方、外国には日本人ほど長生きしないから日本のような課題に向き合わなくて済む国。幸せは何かということにつながるが、人生100年時代を明るく、豊かな時代にすることが政治の役割だ。