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ホーム全日病ニュース(2018年)第928回/2018年11月1日号機能分化や医師偏在の状況を「見える化」...

機能分化や医師偏在の状況を「見える化」

機能分化や医師偏在の状況を「見える化」

【特別講演 1】吉田学 厚生労働省医政局長

 様々な課題がある中で、「より良い医療に向けて」という方針を基本に、①地域医療構想②医師偏在対策③医師の働き方改革を柱として、話したい。
 地域医療構想は2025年に向け、病床の機能分化・連携を進めるため、医療機能ごとに2025年の医療需要と病床の必要量を推計して、定めるものだ。医療機関は、地域医療構想調整会議で協議し、都道府県は地域医療介護総合確保基金を活用することができる。
 今年度中に、各調整会議が集中的に議論し、個別の病院名や転換する病床数等の具体的対応方針を策定することを求めている。とりわけ、公立・公的医療機関には、民間に先んじて、再編・統合の議論を進めてもらう。6月時点で、ベッド数換算では4割ほどが議論の土俵に乗りはじめた。
 ただ、調整会議の進捗状況には地域差がある。我々としては、地域差がある中で、データを「見える化」し、都道府県の関係者に対応を考えてもらう。非稼働病床の取扱いを含め、病床再編の議論を進めてほしい。また、病床だけでなく、市町村単位の介護保険サービスの把握が必要になる在宅医療の受け皿整備も、地域医療構想の肝となる。
 医師数については、2008年以降、地域枠を含め、医学部入学定員を段階的に増員しており、2017年度で1,800人ほど増えて、過去最大の増員数となった。全体の人数が増えて、それがどこに効いたかをみると、大都市で医師数がより増える結果となり、医師不足地域はよりきつくなっている。
 来年度施行される改正医療法等に、医師偏在対策を盛り込んだ。医師偏在指標を用いて、相対的に医師が少ない地域を「見える化」し、そこで頑張っている医師を支援したい。都道府県には、定量的な目安で医師確保計画を定め、PDCA サイクルを回して、大学との協力関係の下、実効力がある対策を講じてもらう。医学部・臨床研修・専門研修の各段階で、偏在を少なくする対応を図る。これらの具体的な対策を「医療従事者の需給に関する分科会・医師需給分科会」で議論している。
 都道府県には、これまで医療提供体制に関連する様々な会議体があり、重複感が生じていたため、地域医療対策協議会に統合する。都道府県というエリアが医師偏在対策の中心となる。都道府県と地域の医療関係者が緊密に連携し、意思疎通を図ってほしい。
 働き方改革はオールジャパンでやることが決まった。だが、すべての業種に一律に適用するのは難しく、医師に対しては、2024年までオールジャパンのルールを適用しない。その後の取扱いを今年度中に決めるため、「医師の働き方改革に関する検討会」で議論している。医師に適用する時間外労働の上限規制の設定だけが問題ではない。医療を良くするために、医療の特殊性を踏まえ、医師の長時間労働を是正する勤務環境改善をあわせて実施する。
 全体に関し、2025年に向けた改革とその後の2040年では、見える世界が少し違うことを指摘する。キーワードは健康寿命と生産性向上である。足元の改革とその後の人口減少社会への対応を考えていく難しさがある。
 抽象的には、地域共生社会を実現するため、医療を含めた社会サービスが、総合化・包括化・効率化されることが求められる。また、個々のサービスの質を確保するには、人的資源の育成や財政面の持続可能性が特に重要だ。

 

全日病ニュース2018年11月1日号 HTML版

 

 

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    2018年2月1日 ... 猪口 今回の座談会では、武田俊彦医政局長に①地域医療構想の進め方②医師
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    思います。 ... 例えば、回復期が足りないので、急性期の基幹病院が、急性期病床
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