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医薬品などへの価格調整の手法で論点示す

医薬品などへの価格調整の手法で論点示す

【中医協・費用対効果評価等合同部会】保険収載の可否には用いない

 厚生労働省は10月17日、中医協の費用対効果評価専門部会・薬価専門部会・保険医療材料専門部会合同部会(荒井耕部会長)に、医薬品や医療機器の費用対効果評価の本格的な実施に向けて、論点となる事項を示した。増分費用効果比(ICER)などで費用対効果の「よい・悪い」がわかれば、それを価格調整にどう用いるかが課題になる。合同部会では今後、費用対効果評価の結果を医薬品などの実際の価格に反映させる手法を議論していく。
 高額だが画期的な新薬が相次ぎ登場し、薬事承認され、保険収載される状況にある。医療保険財政への影響から、費用対効果評価の仕組みが議論されている。同日の合同部会の議論では、仕組み活用の範囲について、保険収載の可否に用いることには、「時期尚早」との意見で一致した。当面は価格調整に限って活用することを念頭に検討する。ただ、将来的には、保険収載の可否に用いることを検討すべきとの意見も出た。イギリスでは保険収載の可否にも用いているという。
 対象品目は、価格は高くても患者数が少ないため、市場への影響は大きくない品目の取扱いや、薬価等の算定方式に応じて費用対効果評価を反映させる範囲などが論点になった。新規収載品と既収載品については、全日病会長の猪口雄二委員が、「現状だと新規収載の段階で、価格調整を行うのは難しいのではないか」と問題提起。厚労省は、価格調整の具体的な時期について、改めて案を示す考えを示した。
 また、類似機能区分比較方式では、加算部分への価格調整にとどめるべきとの意見が多かったが、原価計算方式に対して、原価に不透明な部分があり、加算部分以外も価格調整の対象にすべきとの意見が出た。
 実際の分析作業を行う厚労省の体制も課題となっている。人材育成を含め、体制強化を図るが、短期間で劇的な強化は見込めない。そこから逆算すると、当面は試行的導入時と同じく10品目程度が限界との考えを示す委員もいた。
 希少疾患に対する医薬品など、費用対効果評価において、配慮が必要なものへの対応も論点となっている。
 試行的導入では、倫理的・社会的な観点で考慮する要素として、◇感染症対策など公衆衛生的観点◇公的介護費や生産性損失など分析に含まれない追加的な費用◇QOLは向上しないが生存期間が延びる治療◇代替治療が存在しない─があがった。指定難病、血友病、HIV 感染症は、費用対効果評価そのものの対象から外れた。
 今回厚労省は、本格導入で希少疾患に用いる品目や小児のみに用いる品目は、費用対効果評価の対象から外すとともに、適応症の一部で希少疾患や小児に用いる品目や抗がん剤は、総合的評価(アプレイザル)を行う際に、配慮するとの案を示した。

薬価改定めぐり業界からヒアリング
 同日の総会では、消費税引上げに伴う薬価改定をめぐり、関係業界からヒアリングを行った。日本製薬団体連合会、米国研究製薬工業協会、欧州製薬団体連合会は連名で意見を提出。薬価改定は来年10月に実施するとともに、通常の薬価改定と位置づけが異なるため、薬価引下げは限定的なものにとどめることを主張した。
 来年10月の消費税引上げに伴い、控除対象外消費税に対応するため、来年度中に薬価改定が行われる。薬価への上乗せが行われるが、市場実勢価格に上乗せするため、全体では薬価は下がる。そのための薬価調査の準備が現在、進んでいる。製薬業界は、消費税対応という趣旨を踏まえれば、「薬価改定は来年10月に実施されるべきもの」と強調した。
 また、通常改定とは位置づけが異なることから、「新薬創出等加算、基礎的医薬品および最低薬価の対象となる品目については、薬価を維持する措置を実施することとし、長期収載品に係る追加的な引下げや再算定、新薬創出等加算の累積額の控除などは実施すべきではない」と主張し、限定的な改定にすることを求めた。

 

全日病ニュース2018年11月1日号 HTML版

 

 

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    2017年7月15日 ... 費用対効果評価は保険償還の判断には用いない|第898回/2017年7月15日号
    HTML版。21世紀の医療を考える「全日病ニュース」は、全日本病院協会が毎月1日と
    15日に発行する ... 中医協費用対効果評価専門部会(荒井耕部会長)は6月28日、
    来年度の制度導入に向けて議論を進めた。 ... このため、保険収載の一定期間後に
    価格調整を行うなど、費用対効果評価の仕組みについて一定の合意を得た。

  • [2] 医薬品及び医療機器の費用対効果評価に関する取扱いについて

    https://www.ajha.or.jp/topics/admininfo/pdf/2018/180209_5.pdf

    2018年2月7日 ... 医薬品及び医療機器の費用対効果評価に関する取扱いについて. 1 既収載品に係る
    費用対効果評価の手続き. (1) 対象品目の指定. 中央社会保険医療協議会の定める
    以下の選定基準に基づき、費用対効果評価専門部会におい. て指定・ ...

  • [3] 費用対効果評価の仕組みの制度化を議論|第889回/2017年3月1日 ...

    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20170301/news05.html

    2017年3月1日 ... 中医協費用対効果評価専門部会(荒井耕部会長)は2月8日、医薬品・医療機器の
    費用対効果評価の仕組みの制度化について、夏をめどに一定の結論を得ることを了承
    した。 費用対効果評価は、高額な医療技術が医療保険財政に与える影響を懸念し、
    議論が始まったもの。ただ「薬価の ... また、新規収載品の費用対効果評価の評価体制
    やデータ整備、制度化に十分に対応するための組織・体制を課題にあげた。

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