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ホーム全日病ニュース(2018年)第928回/2018年11月1日号成熟社会におけるコミュニケーションの大切さを確認...

成熟社会におけるコミュニケーションの大切さを確認

成熟社会におけるコミュニケーションの大切さを確認

【市民公開講座1】成長から成熟へ~生きづらさの処方箋~

 学会1日目の市民公開講座1では、「成長から成熟へ」をテーマに3人の若手起業家が講演した。
 最初に登壇したアイリス代表取締役の沖山翔氏は、AIとロボティクスののテクノロジーが医療にもたらす変化について話した。ヒトゲノム解読を筆頭にテクノロジーは倍々ゲームで進化する。AIは、人間がプログラミングするのではなく、自ら膨大な画像を学習することによって人間より高い精度で認識、予測することができる。
 一方、ロボティクスが得意とするのは自動化、運動・感覚機能の拡張だ。医療ロボット「ダヴィンチ」は手振れ補正機能があり、自走式ロボット「バクスター」は、プログラミング不要で自動学習し、産業界に革命をもたらしている。
 医療者は、テクノロジーをどう使うべきか。「病気を治すのは手段であり、医療の目的は人(患者)を癒すこと、幸せになるのを助けることだと思う。患者の不安や悩みの解消にテクノロジーを使うべきだ」と沖山氏は述べた。
 メディカルノート共同創業者の井上祥氏は、成熟社会におけるコミュニケーションを論じた。井上氏らが運営するメディカルノートは、医師と患者をつなげる医療Webメディアで、医療リテラシーの向上と医療現場におけるコミュニケーション課題の解決を目指している。
 コミュニケーション技術の発展により、インターネットは時間的制約、空間的制約を超え、医療情報へのアクセスは飛躍的に向上した。医師と患者の関係も変えつつある。それでも、医療者と患者の情報の格差は大きい。リンパ節の「郭清」を「覚醒」と勘違いするなど、医療者なら当たり前の言葉も患者は誤解する。コミュニケーションを高める取組みが必要で、井上氏の事業のねらいもそこにある。
 情報が氾濫し、どの年齢層でもインターネットを使って医療情報を検索するようになった。その反面で、検索によって操作されてしまう部分もある。主体的に情報を得る力が必要で、「患者を手助けしたい」と井上氏は述べた。

家庭料理はコミュニケーション
 シェアダイン代表取締役の飯田陽狩氏は、食を起点とした豊かさについて講演。共働き世帯が増え、外食、中食市場が拡大している中で「家族と食卓を囲むこと」と「家庭料理」の大切さを訴えた。家族で食事を共にする頻度が少ない10代の子どもは「タバコやアルコールを飲む」「摂食障害に陥りやすい」「学業成績も低い」などのデータが明らかになっている。「食事の際のコミュニケーションが鍵で、食卓での会話は普段の会話の2倍の効果がある。両親が自分への興味を持っていること、自己肯定感の醸成、言語能力の向上につながる」(飯田氏)。
 家庭料理はコミュニケーションそのものだ。子どもの好みなど相手をおもんぱかって作るのが家庭料理の本質である。「私が小さいころ落ち込んで帰宅したら、母に何も話していないのに食卓に大好物の茶わん蒸しが並んでいた。これぞまさにコミュニケーションだと思う」と飯田氏は述べ、家庭料理の大切さを強調した。


沖山氏


井上氏


飯田氏

 

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