全日病ニュース

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トルツ皮下注の再申請で薬価算定の不透明感高まる

トルツ皮下注の再申請で薬価算定の不透明感高まる

【中医協総会】
薬価は約10万円下がる

 中医協(田辺国昭会長)は11月9日に総会を開き、乾癬治療薬のトルツ皮下注(日本イーライリリー)を含む35品目23成分の新医薬品の保険収載を承認した。トルツ皮下注は8月24日の総会で、薬価が高いことから、処方制限を図った上で承認したが、企業側が申請を取り下げた経緯がある。今回、約10万円下がった薬価を認めたものの、薬価算定に対する不透明感がさらに高まる結果となった。
 8月24日の中医協総会に、薬価算定組織によるトルツ皮下注の算定案が示された。効能・効果は既存治療で効果不十分な尋常性乾癬や関節症性乾癬。
 80mg1mL 筒で24万5,873円だった。類似薬効比較方式で算定し、外国価格調整により、調整前の14万6,244円の約1.7倍になった。「薬価が高すぎる」として、中医協委員からは、承認に難色を示す意見が相次いだ。
 その結果、中医協は、同種同効薬を使用しても効果が不十分な場合にトルツ皮下注の使用を限定する留意事項通知を出すことを条件に承認した。しかしその後、企業側が申請を取り下げ、薬価収載は行われなかった。
 今回の算定案では、24万5,873円が14万6,244円となり、約10万円下がった。算定薬価が大きく下がったのは、外国価格調整のルールによる。
 薬価算定における外国価格調整は、米、英、独、仏の薬価の平均である外国平均価格を算出し、それが調整前の価格の0.75倍を下回れば、引上げ調整を行うというルールだ。米国が示す薬価(リストプライス)が、他国と比べ突出して高いことから、このルールがトルツ皮下注の薬価を引き上げた。
 ただし外国価格調整では、最低薬価の3倍を上回る国の薬価を除外する規定もある。今回の再申請の際の為替レートの期間が、ちょうど英国のEU 離脱投票結果が尾を引くポンド安の期間に当たった。為替の影響で、英国と米国の薬価が3倍以上となり、米国の薬価が除かれ、その上で、ポンド安の平均外国価格が算出されたため、大幅に算定薬価が下がった。
 診療側委員からは、「為替レートの変動がこれだけの影響を与えた。為替レートを利用した企業戦略に医療保険制度が翻弄されているのではないか」との意見が出た。
 さらに、診療側の委員は「米国のリストプライスはメーカー希望小売価格。
 他は保険償還価格であり、フェアでない。米国は除外すべきではないか」と提案した。支払側の委員は、「10万円下がっても利益が出ることに驚く。薬価に含まれる営業利益率について今後議論が必要だ」と訴えた。
 また、同日承認した新医薬品のうち、ミカトリオ配合錠(日本ベーリンガーインゲルハイム)とミケルナ配合点眼液(大塚製薬)を、処方日数制限の例外とすることを了承した。処方日数制限の取扱いでは、薬価収載から1年間は原則1日14日分を限度に投与するルールがあるが、既収載品の配合剤などの場合は制限を設けないとの取扱いとなっている。
高額な医療技術で費用対効果評価
 中医協総会は同日、医薬品などへの費用対効果評価の試行的導入で、「高額な医療機器を用いる医療技術」の具体例を費用対効果評価専門部会で選定することを了承した。費用対効果評価の試行的導入では、オプジーボやソバルディ(ギリアド・サイエンシズ)、ハーボニー(同)などの医薬品や医療機器ですでに対象を選定済み。
 医薬品と医療機器は2018年度改定で価格への反映を行うが、「高額な医療機器を用いる医療技術」での実施時期は決まっていない。実施時期を含めて、費用対効果評価専門部会での議論になる。2016年度診療報酬改定の附帯意見を踏まえた対応だ。

 

全日病ニュース2016年12月1日号 HTML版