全日病ニュース

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病院のあり方に関する報告書2015-2016年版

病院のあり方に関する報告書2015-2016年版

【病院のあり方委員会企画】
病院のあり方委員会委員長 徳田禎久

 「病院のあり方に関する報告書2015-2016年版」から4章の執筆責任者により各テーマについて解説があった。
 「医療提供体制と中小病院 猪口雄二先生」:全日病を中心に提唱して来た「地域一般病棟」が「地域包括ケア病棟」となるまでの経緯説明と今後の展望、特に地域包括ケアシステムにおける病院の役割などが示された。この病棟が、軽症急性期、亜急性期、在宅生活復帰診療支援、介護との連携など幅広い機能を持つことから、中小民間病院の将来の選択肢として重要であると指摘。また、療養病床医療区分導入時のような安易な対応ではなく、軽症急性期や在宅診療をしっかり行う体制を確立し、相応の診療報酬要求も強調された。
 「医療従事者-必要職員の確保 木村厚先生」:医師をはじめとする各職種の不足の実態と解消策を報告書に準じて解説がなされ、全職種で当面は育成促進が必要であり、偏在解消の努力、女性の勤務環境の改善、医師の事務作業補助などの対策が示された。介護職不足の要因が業務そのものと給与水準の問題であることから解決の難しさが示され、日本語試験の問題解消を前提とした外国人労働者の導入が提唱された。
 「医療圏と地域医療構想 川嶌眞之先生」:大都市部と地方では対応が異なることを東京、大阪の例・演者自身の医療圏の状況で示し、医療需要を疾病毎・救急などに従って分析し、構想策定の際にそれに相応する医療圏を考える必要性と近隣医療圏との協調も考慮すべきことが強調された。自施設診療圏がアクセスの関係もあって生活圏と合致していることから、地域医療構想調整会議で実際の医療圏を踏まえた議論を行っていくことを提唱された。
 「医療の質管理―地域レベルでの質確保をどう考えるか 飯田修平先生」:「質は顧客の要望への適合で、総合的な評価が必要」だが、顧客の対象やその要求によって質の評価が異なるので、概念整理の必要性を強調。地域医療の質確保では、サービス、組織管理、提供者、顧客満足の各項目で検討が必要とし、演者の東京練馬区での実態を種々の視点から考察。地域の規定については、行政区画、医療機関からの距離と交通網などで異なることから境界の設定は困難、医療圏/生活圏の整合性も困難であることに加え、評価すべき質、評価される客体の決定も難しく、患者利用者の状態が多様、関係する法律や保険も多いことから、「地域レベルの質評価・確保」は困難と結論付けられた。
 ディスカッションでは、「地域包括ケア病棟」については、DPC 要件厳格化に伴う亜急性対応として転換する流れが出るだろうが、地域包括ケアシステムの中で急性期から在宅まで担うとする地域一般病棟の理念にそって開設すべきであること、厳しい地域もあろうが会員病院が諸条件をクリアして取得することが望まれるとされた。「医療従事者問題」では、外国人労働者導入を、国が方向性を明確にし教育など受け入れ態勢充実を条件に肯定すべしとの意見と、まずはアクティブシニアの登用等工夫が先との意見があった。
 「医療圏」では、地域医療構想調整会議で人口動態や診療実態など十分な情報から共通認識をしっかり持って議論すべきで、住民の理解も必須とされた。
 全体を通じて大きな問題提起として、限られた財源の中で提供する医療の範囲を国民に問う時期にきており、求める医療によっては応分負担の必要性を問うべきとの提言があった。
 会長から、進行中の医療計画などが国主導トップダウンの施策に対して、地域医療構想策定では現場の意見集約から物が言えるボトムアップのチャンスなのでしっかり対応すべきであり、今一度、現場の視点から提供体制を考える報告書の作成が必要であるとの認識が示された。

 

全日病ニュース2016年12月1日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] 第5章 医療提供体制:「病院のあり方に関する報告書」(2015-2016年版 ...

    http://www.ajha.or.jp/voice/arikata/2016/05.html

    二次医療圏は全国で均一化されておらず、大きな差異を生じているが、各地域には基幹
    的病院が必要であるとともに、各生活圏域で軽度~中等症の急性疾患に対応できる
    入院施設、基幹的病院から転院してリハビリテーションや引き続き入院を行う亜急性期
     ...

  • [2] 第3章 医療・介護提供体制:「病院のあり方に関する報告書」(2011年版 ...

    http://www.ajha.or.jp/voice/arikata/2011/03.html

    いつでも・どこでも・均一な医療サービスを・誰もが受けることができる、というような提供
    体制は有り得るであろうか。二次医療圏で考えれば、一定以上の人口が生活する地域
    に、おおよそ全科の急性期入院医療を提供できる病院が存在することが整備目標とな ...

  • [3] 病院のあり方に関する報告書(2015-2016年版)

    http://www.ajha.or.jp/voice/pdf/arikata/2015_2016_arikata.pdf

    はじめに. 第1章 「 2025 年の日本」を想定した報告書. 1. 第2章 医療の質と安全確保.
    10. 第3章 医療費. 24. 第4章 医療圏. 29 ..... 程度短縮。減少するニーズは、亜急性期
    回復. 期リハ等、早期の軽快(在宅・外来). (軽度急性期. (約2割)). 軽度急性期及び.

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