全日病ニュース

病院の広報戦略
―先進的な広報活動を知る―

【広報委員会企画】
広報委員会委員長　高橋　肇

　広報活動は、「患者が知りたいこと」と「患者に知らせたいこと」のギャップを埋めるコミュニケーション活動とも言える。以前行った全日病会員への広報活動アンケート調査では、「どのように情報発信したらいいのかわからない」、「広報人員が確保できない」、「お金をかけてもその効果がわからない」、など現場のとまどいの意見が多く寄せられた。今回、広報活動で注目を浴びている３病院の理事長にお話しを頂戴した。ご本人からの講演要旨を掲載する。
１．社会医療法人HITO 病院　石川賀代理事長　「地域包括ケアシステム実現に向けた広報の取り組み」
　地域包括ケアシステム実現のため「種まき｣を実践し、広報が担い手となり、様々な病院事業を展開している。
　地域包括ケアシステムにおける「自助」「互助」に加え、未来を担う子供達への働きかけ「未来への基盤」の３つを柱とし、現在30事業を展開。
　「自助」では、市民や行政機関、企業等で講演会や相談会、介護や認知予防教室を開催。子宮がん検診受診率のアップのため行政と協力し、啓発活動を実施。「互助」では、在宅医療・介護関係者向けの研修会を実施。その他、医師との定期的な症例検討会や、セラピストが技術を学ぶ場を提供している。
　「未来への基盤」としては、地域住民を対象にした「HITO（ひと）フェスタ」を実施。1,000名の来場があり、行政、企業、市民が病院を通じて触れ合う機会を提供出来た。
　取り組みを通じ、市民の求める町とは何か、病院に必要とされているものは何かを共に考え、これからの町作りに必要な資源や、意識が高まっていくのではないかと考える。
２．社会医療法人博愛会相良病院　相良吉昭理事長　「非線状的思考から創る女性医療」
　当院は、がんの親を持つ子どもへの支援や患者の就労支援を続けながら、僻地や離島の医療機関へ定期的に医療スタッフを派遣し、2014年８月に領域別がん診療連携拠点病院の認可を受けた。2015年２月には効果的な乳がん医療の展開を行うべく、隣県にある乳がん専門病院「ブレストピア宮崎病院」とグループ化を行った。
　「今の医療に何が足りないか？」の、その一つ一つを実現させ、それらを物語にして制度や組織作りに反映させることは、「非線状的な思考」から組織作りを行うことを意味する。「より幅広く、より深い医療」を永続的に実践するために、周囲の医療機関や異業種と相補的につながり、制度へ積極的に介入できるよう広報戦略をおこなっている。
３．医療法人大誠会　田中志子理事長　「スターの輩出、それが当グループの戦略的広報」
　私が学会で伝えたかったポイントは、①理念の継承、②方針の見える化、③スターの輩出。自院がいかなる歴史的背景を持ち、地域においてどんな役割を果たしてきたのか。父から受け継いだ「かかりつけ医魂」を次世代にも伝えながら、地域に根ざした医療・介護・福祉を展開する。方針を明確に打ち出し、見える化しながら伝え、地域住民の理解を得ていく。結果として当グループの広報戦略となったと考える。
　そして、「スターの輩出」。スタッフが行政機関や大学などで講義をする。
　職員１人ひとりが輝ける環境を整備し、スターを生み出す。スターを輩出するためのプロデューサーとして、職員の活動を積極的に支援することが私流の「広報」である。
　今回座長の立場で感じたのは、トップである理事長自らが内外に対し確固たる理念、理想を語りかけており、法人内のガバナンスが非常に機能している印象を受けた。
　当委員会として、今後全日病ニュース上に「広報のあり方シリーズ」と称して全国のモデル事例を紹介していきたいと考えている。