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地域医療構想に都道府県の特性出る

地域医療構想に都道府県の特性出る

【特別講演】
神田裕二 厚生労働省医政局長

 地域医療構想は今年度中に全都道府県に策定してもらうことになっている。
 8月31日時点で、19都府県が策定済みだ。それぞれの構想は、地域に応じて異なるため、その特徴を説明する。
 青森県や岐阜県など地方では、県庁所在地の構想区域だと、急性期など類似の機能を持つ自治体病院が並存している。各構想では、具体的な自治体病院の名称をあげて、再編ネットワーク化の方向が記載されている。地理的な問題や政策的な医療を担う急性期の医療機関以外では、回復期等への移行や病床規模の適正化などを検討すると記述している。
 一方、大都市の事例として東京都をみると、全体を概括したグランドデザインを示している。大学病院も多く、高度先進医療を将来にわたり提供できる体制を構築するとしている。交通網が発展しているため、構想区域ごとに病床機能でみると患者流出入の状況が大きく異なるのも特徴だ。ただ、隣接する構想区域を含めれば、完結率は高い。
 また、東京都は、将来の必要病床数が既存病床数を上回る。だが、慎重な記載となっており、単純に増やす考えではないように読める。
 このように地域に応じた特徴があるが、公立病院が中心の地域では、具体的な記述が比較的しやすいのだと思う。
 逆に、都市部のように、急性期の病院が林立している地域では調整が難しいと感じる。課題を共有する上でも、中核病院が比較的少ない地域の方が容易で、都会では難しいようだ。
 問題は、急性期で競合する病院が多く、人口も減少している地域の調整である。ある意味、撤退戦といえるので、「競争」ではなく、「協調」し、役割分担を考えていくのが現実的だ。
 そのために、地域医療構想調整会議がある。ただ、多くの関係者の参加を厚労省が勧めてしまったのだが、人数が多すぎるとの指摘を受けている。本音の議論をするには、もう少し人数を減らす必要があるのかなと感じている。
 「協調」を図る手段として、地域医療連携推進法人がある。具体的な検討事例として、◇岡山大学が中心の総合病院グループ(岡山県岡山市)◇酒田市病院機構等の自治体病院中心の連携(山形県酒田市)◇社会医療法人博愛会等のがん専門病院の連携(鹿児島県鹿児島市)─などがある。
 地域医療構想を進めるには、在宅医療の受け皿をつくることが非常に大事だ。構想の推計では、介護施設を含めた在宅等への移行が前提にある。在宅医療を整備するには、介護保険サービスと密接な関係があるので、都道府県と市町村が連携し、介護保険事業計画と整合的な計画をつくる必要がある。

 

全日病ニュース2016年11月1日号 HTML版

 

 

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