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看護必要度の一部項目はDPCデータで判定可能

看護必要度の一部項目はDPCデータで判定可能

【中医協・入院医療等分科会】来年度以降は両者を併用し基準値や加算で評価

 中医協の入院医療等の調査・評価分科会(武藤正樹分科会長)は11月9日、次期診療報酬改定に向け入院医療に関する報告書をまとめた。焦点となっていた急性期入院医療の評価手法に関しては、現行の「重症度、医療・看護必要度」(看護必要度)をDPCのEFファイルの一部の項目で判定可能と整理。
 次期改定では両者を併用し、急性期病棟の該当患者割合の基準値や加算の段階的評価で試用する方向を示した。ただし結論は、総会が議論して決める。
 同日は、全日病と日本病院会が行った「重症度、医療・看護必要度に関する緊急アンケート(中間集計)」の説明があった。それによると、一般病棟の施設基準の届出で、DPCデータのEFファイルを用いて計算する手法による評価が選択可能になった場合、「選択を検討する」との回答は約6割だった。
 「検討しない」との回答の理由で最も多かったのは、「具体的な内容がわからない」。看護必要度の評価・入力作業の時間は、1勤務当たり「30分以上60分未満」の病院が約5割で最も多かった。 また、看護必要度と診療報酬項目との突合や検証を実施している病院は約6割だった。アンケートは447病院から回答を得たもの(回答率36%)。全日病副会長の神野正博委員は、「アンケート結果は2016年度改定で該当患者割合の基準が25%以上になったことで病院が苦労している実態を示す。取りこぼしのないようきちんと把握しないと25%は難しい」と強調した。
 一方、日本臨床看護マネジメント学会も、「看護必要度に関する研修会で実施した受講生アンケート調査」を説明。看護必要度の方がDPCデータよりも患者の重症度の実態を表しているとの回答が約7割で多く、患者1人当たりの看護必要度の評価に要する時間の平均値は約6分との結果を示した。
 アンケート結果を踏まえ、厚生労働省が整理した「急性期の入院医療の評価手法の分析」をもとに議論した。まず厚労省は、看護必要度が有用な指標と指摘しつつ、「報酬算定のための評価手法や事務手続きの視点からは必ずしも適切な運用ではないとの指摘がある」とした。
 一方、DPCデータのEFファイルは、医事会計システムにより、正確なデータが自動的に記録される。看護必要度で測定される患者情報が、EFファイルで把握できるのなら、DPCデータの活用が選択肢になる。ただ厚労省は、両者のデータの定義と性質が異なることから、「判定結果が一致しないことは自明」と指摘。その妥当性を評価するのが今回の分析の目的ではなく、「急性期の入院患者」を把握するため、どのような活用が可能であるかを確認するのが目的と強調した。
 看護必要度とEFファイルの連関性の分析は11月2日の分科会で示されている。例えば、A項目の「3点滴ライン同時3本以上の管理」は、EFファイルの「点滴注射」と「輸血」でみている。なお、B項目(患者の状態)はDPCデータでの把握は困難であり、対象から外した。
 該当患者割合を比べると、EFファイルの方がより低い割合となる項目がA、C項目で多数を占めた。EFファイルの該当患者割合の平均は24.8%。
 看護必要度の28.8%よりも、4ポイント低かった。医療機関ごとにみると、高くなる場合も低くなる場合もある。
 分析結果を踏まえ、厚労省は、すべての項目ではなく、両者がほぼ一致する項目に限ることや、一定の配慮を行えば、「現行の該当患者割合を判定する際に、その一部の項目で、DPCデータを用いることは可能」と整理。また、該当患者割合がEFファイルで低くなる傾向があるため、EFファイルを用いることを医療機関の判断とし、両者を並存させることを検討課題とした。
 さらに、入院基本料での具体的な評価手法を考えると、7対1のように基準値(カットオフ値)として使う可能性と、10対1のように段階的な加算として使う可能性がある。厚労省は、基準値(カットオフ値)は、入院医療に必須である「基本的な要素」で評価し、診療実績に応じた広範で段階的な評価は、入院基本料の中に含まれる「変動的な要素」で行うとの考えを示した。
 これらの厚労省の整理に対し、一部に委員の意見を受けた修正があったが、概ね了承した。神野委員は、該当患者割合の基準が実質的に厳しくならないよう釘をさした上で、賛意を示した。

 

全日病ニュース2017年12月1日号 HTML版

 

 

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